役所の無料相談の活用方法、各専門家事務所が実施する無料相談との違い
相続などの法律相談をするときには、役所の無料相談を利用すると料金がかからないのでメリットを受けられます。直接見知らぬ弁護士事務所に連絡するより慣れ親しんだ役所の方が、問い合わせのハードルも下がるでしょう。
ただし役所の無料相談では、弁護士事務所の相談などとは異なる事項が多々あります。
この記事では役所の無料相談を利用する方法やメリットデメリット、法律事務所に相談する場合との違いなどをご説明します。
これから法律相談を利用しようとしている方はぜひ参考にしてみてください。
目次
1.役所の無料相談とは
役所の無料相談とは、自治体で各種の専門家に無料で相談できるサービスです。
法律相談や行政相談、税務相談や人権相談など、各種の相談を無料でできます。
無料相談できる場所は、市役所や区役所などの市区町村役場が主ですが、男女共同参画センターやコミュニティ施設内などで相談できるケースも多く、詳細は自治体によって異なります。
たとえば東京都千代田区では役所で以下のような無料相談を受けることができます。
東京都千代田区の場合
相談場所
区民相談室(区役所2階)の専門相談・一般相談(すべて無料)
専門相談
- 法律相談
- 税務相談
- 不動産相談
- 土地家屋調査士相談
- 行政相談
- 社会保険・労務相談
- 行政書士相談
- 司法書士相談
一般相談
- 区政に関する相談
- 日常生活相談
遺産分割や遺留分、遺言などの相続問題は、専門相談のうち「法律相談」を利用すると良いでしょう。法律相談には弁護士が対応します。
千代田区の法律相談は千代田区のホームぺージをご参照ください。
https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kurashi/sodanmadoguchi/kuminsodanshitsu.html
相続した不動産の相続登記であれば、司法書士相談を利用しましょう。
2.役所の無料相談に対応する担当者
役所の無料相談に対応する担当者は、相談の種類によって異なります。
専門相談の場合、弁護士や司法書士、税理士などの専門家が対応します(法律相談の場合は弁護士、司法書士相談の場合は司法書士、税務相談の場合は税理士)。
一般相談の場合は市職員や区の職員が対応するのが一般的です。
3.役所の無料相談のメリット
役所の無料相談には、以下のようなメリットがあります。
3-1.専門家に無料で相談できる
まずは専門家に無料で相談できるメリットが大きいでしょう。一般的には30分5000円程度かかる法律相談も、役所で相談すれば費用がかかりません。
3-2.気軽に利用できる
相談のハードルが下がるのも大きなメリットの1つです。いきなり弁護士事務所に電話をして相談予約をとるのはハードルが高いと感じる方でも、役所の無料相談であれば気軽に利用しやすいでしょう。
4.役所の無料相談のデメリット
一方、役所の無料相談には以下のようなデメリットもあります。
4-1.時間制限、回数制限がある
役所で相談できる時間は、多くの場合1回20~45分程度です。延長はできないケースが多数です。また同じ相談の場合、回数制限がもうけられる自治体も多数あります。
時間制限、回数制限があるのは役所の無料相談のデメリットの1つといえるでしょう。
4-2.定められた日時にしか相談できない
2つ目に、定められた日時にしか相談できないデメリットがあります。たとえば千代田区の場合、法律相談は水曜日と金曜日の午後1時~3時45分までです(1枠45分、第5水曜日と金曜日は休み)。
土日祝や夜間の相談はできません。
4-3.担当者を選べない
役所の無料相談を担当する専門家は、持ち回りとなっています。
たまたまその日に担当になった人に相談できるだけであり、相談者は相談担当者を選べません。
たとえば「相続問題を相談するので相続に詳しい人を選びたい」などと考えてもそういった希望まではかなわないのです。担当者を選べないのは無料相談の大きなデメリットといえるでしょう。
5.役所の無料相談を利用する流れ
役所の無料相談を利用したい場合、以下の流れで進めましょう。
STEP1 電話で予約する
役所の無料相談は予約制となっているので、まずは予約をとらねばなりません。
多くの自治体では電話で予約をとれるので、広報誌や市区町村のHPを見て電話番号を確認し、問い合わせましょう。
STEP2 当日、役所へ行く
次に、無料相談が行われる当日に役所へ行きましょう。遅れると相談時間が短くなってしまうので、早めに到着するように行くようおすすめします。
STEP3 相談を受ける
役所についたら、予約していた通りに各種の専門家に相談に乗ってもらえます。
基本的に延長はできないので、事前に聞きたいことをまとめておきましょう。
費用負担はないので、相談が終わればそのまま帰宅できます。
6.役所の無料相談の注意点
役所の無料相談を受ける場合には、以下のような点に注意が必要です。
6-1.時間に遅れないようにする
役所の無料相談は、相談時間が限定されていて延長もできないケースが多数です。また月に数回しか実施されていないので、次に予約をとるとしてもかなり先になってしまいます。
相談開始の予定時刻に遅れて相談時間が減ってしまったら大変もったいないといえるでしょう。
無料相談を受ける場合には、時間に遅れないように役所へ行ってください。
6-2.相談時間が短い
役所の無料相談を受けてみるとわかりますが、相談時間は非常に短くなっています。20~45分程度では、聞きたいことに対する回答を十分に受けられないケースが多数あります。
消化不良のまま相談が終了してしまうケースも少なくありません。
無料相談を受ける場合には、時間を無駄にしないように準備を整えていくべきです。説明だけで数十分かかってしまうような相談は無料相談に適しません。
6-3.担当者が解決してくれるわけではない
無料相談で担当者がしてくれるのはあくまで「アドバイス」であり、問題の解決ではありません。たとえば遺産分割でトラブルが生じていても、担当者が代理人になって解決してくれるわけではないのです。解決は、あくまで相談者本人が取り組まねばなりません。
担当者に解決の期待を寄せないよう、注意が必要です。
6-4.担当者にそのまま依頼できない
役所の無料相談では、相談担当者にそのまま依頼ができません。
たとえば弁護士の場合、弁護士会を通じて依頼しなければならないので、手間と時間がかかります。弁護士から相談者へ名刺を渡すことも禁止されているケースも多々あります。
ただし担当者に依頼できないわけではないので、どうしても依頼したい場合には、担当弁護士に依頼の手順を確認しましょう。
6-5.同じ担当者が担当してくれない
継続相談をする場合、できれば同じ弁護士に相談したいと考えるでしょう。その方が話もスムーズですし、効果的なアドバイスを受けやすいからです。
しかし役所の無料相談の担当者は日替わりで代わるので、次回行ったときに同じ担当差になる可能性は高くはありません。
異なる担当者の場合、また一から説明をやり直さねばならないので、手間と時間がかかってしまいます。
7.役所の無料相談と弁護士事務所の相談の違い
最近では、役所ではなく一般の弁護士事務所でも無料相談を受け付けているところが多くあります。
以下では役所の無料相談と弁護士事務所の無料相談の違いを解説します。
7-1.弁護士事務所なら担当弁護士を選べる
役所の無料相談えは相談担当者を選べませんが、各弁護士事務所が実施している無料相談の場合には担当弁護士を選べます。
HPなどを見て気に入った弁護士に無料相談を申し込めば、その人が担当してくれるでしょう。担当者を選べる点で、役所よりも弁護士事務所の無料相談の方がメリットは大きくなります。
7-2.弁護士事務所では土日祝や夜間の相談ができる
弁護士事務所では役所のように毎月の曜日が決まっておらず、平日なら毎日相談を受け付けてもらえます。平日の昼間に限らず、土日祝や夜間の相談も受け付けている事務所が多数です。
フレキシブルに相談時間に対応してもらえるのも、弁護士事務所の無料相談のメリットといえるでしょう。
7-3.弁護士事務所ではオンライン相談ができる
弁護士事務所ではオンライン相談を利用できるケースがよくあります。
遠方の相談にも対応できるので、全国対応している事務所も少なくありません、
役所では実際に役所へ行って相談しなければならないので、近くの住人でないと利用しにくいでしょう。
この点でも弁護士事務所の方にメリットがあります。
7-4.弁護士事務所ではメールやLINENで予約できる
役所の無料相談は電話でないと予約できず、予約受け付け時間も限定されているのが一般的です。
一方弁護士事務所の無料相談の場合、LINEやメールなどでも受け付けてもらえる場合がよくあります。24時間365日予約を受け付けている事務所も珍しくありません。
予約方法が便利なのも弁護士事務所のメリットといえるでしょう。
7-5.弁護士事務所の方が近い日にちで予約をとりやすい
役所の無料相談は火曜日と水曜日のみなど日程が限定されているケースが多く、直近の日にちにはなかなか予約をとりにくいものです。
弁護士事務所であれば毎日相談を受け付けているので、予約をとりやすいメリットがあります。
7-6.弁護士事務所では直接依頼できる
役所の無料相談の場合、直接依頼が制限されているのでスムーズに担当者へ依頼できません。
弁護士事務所の無料相談なら、担当者を気に入ったらその場で依頼することも可能です。
スムーズに直接依頼できるのも弁護士事務所の無料相談のメリットといえるでしょう。
7-7.時間制限、回数制限がない
弁護士事務所の相談の場合、役所と違って20~45分などの時間制限はありません。また同じ問題でも何度でも相談できます。
ただし無料になるのは「初回30分のみ」などの事務所もあるので、延長や2回目などの場合、完全に無料になるとは限りません。
8.役所の無料相談をおすすめする人
以下のような方<は、役所の無料相談を利用してみる価値があります。
- とりあえず無料で軽めの相談をしたい
- 解決は自分でするので、専門家のアドバイスだけがほしい
- 予約が先になってもかまわない(急いでいない)
- 担当者を選ぶ必要はなく、専門資格さえあれば誰でも良い
9.弁護士事務所の無料相談をおすすめする人
以下のような方は役所の無料相談ではなく弁護士事務所の相談を利用しましょう。
- 相談する弁護士を選びたい
- 実際にトラブルが発生していて、代理交渉や調停、訴訟などの対応を依頼する可能性がある、依頼したい希望がある
- 土日祝や夜間に相談したい
- オンラインで相談したい
- 2,30分では解決できないような込み入った相談がしたい
- 同じ問題で複数回相談したい
役所の無料相談にはメリットもありますがデメリットもあります。相談担当者を選びたい場合や土日祝・夜間などに相談したい場合には弁護士事務所の無料相談を利用すると良いでしょう。トラブルに巻き込まれた場合などにはぜひ参考にしてみてください。