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【おひとりさま相続が増加中】生前対策を専門家に相談すべき理由

【おひとりさま相続が増加中】生前対策を専門家に相談すべき理由

最近では独身の方や親族付き合いのない方が増えて、いわゆる「おひとりさま相続」の事例が増加しています。おひとりさま相続の場合、生前に対策しておかないと相続する人が誰かわからなくなったり遺産内容を把握できなかったりして、死後に混乱が生じてしまう可能性が高くなります。

お世話になった人や団体など、相続人以外の人に財産を遺したい場合には、遺言書を作成するなど対策をとっておかねばなりません。

今回はおひとりさま相続の方がやっておくべき生前対策の方法をお伝えします。
親族のいない方や親族づきあいのない方はぜひ参考にしてください。

1.おひとりさま相続とは

おひとりさま相続とは一般的に、同居する家族のいない一人暮らしの方の相続を意味します。ただし「法定相続人がいない場合の相続」を意味する場合もあり、必ずしも一義的ではありません。

以下のようなひとり暮らしの方の相続はすべて「おひとりさま相続」といわれる可能性があると考えましょう。

  • 天涯孤独で親族がまったくいない方
  • 子どもがいない方
  • 子どもがいても疎遠なひとり暮らしの方

最近では、高齢になっても一人暮らしをしている「おひとりさま」が増えています。
一生独身の方もいますし、配偶者と死別した方、離婚した後再婚していない方なども「おひとりさま」です。
少子高齢化と医療の発展によって元気な高齢者が増えたこと、子どもと同居せずに気楽なひとり暮らしを望む人が多いことなどが影響し、おひとりさま相続が増加しているのです。

2.おひとりさま相続の問題点

おひとりさま相続では、以下のような問題が発生するケースが多々あります。

2-1.相続人が不明で誰も死亡後の手続きを行わない

おひとりさまの場合、死亡してもすぐに相続人が明らかにならないケースがよくあります。
親族と疎遠になっているケースが多く、誰も相続人調査を行わないためです。
すると保険や年金の手続きを始めとして誰かがやらなければならない相続手続きが行われず、混乱が生じてしまいます。

2-2.財産が散逸してしまう

おひとりさま相続の場合、誰も相続財産調査や財産管理を行わないケースが少なくありません。そうなると、預貯金などの財産が放置されたり価値のある財産が散逸したり時効にかかったりして失われる可能性があります。

2-3.そもそも相続人がいない

おひとりさまには、そもそも法定相続人がいないケースもよくあります。その場合、当然誰も相続手続きをしません。賃貸物件の解約や光熱費を止める手続きなども行われず他人に迷惑をかけてしまいますし、預貯金や不動産の名義変更も行われず放置されてしまいます。

2-4.生前の財産管理や介護に支障を生じる

おひとりさまの場合、認知症になって自分で財産管理するのが難しくなったときにも支障を生じます。子どもなどの同居者がいれば成年後見人となって代わりに財産管理してくれるケースが多いのですが、親族付き合いのないおひとりさまの場合、自分で財産管理できなくなっても誰も気づきにくいためです。

そうなると、判断能力のないまま不適切な方法で財産を管理し、財産を失ってしまうリスクが高まります。生前に財産状況を把握できていないと、死後に調べるのも余計に大変になってしまうでしょう。

必要なときに要介護認定を受けるなどして介護サービスを受けたり介護施設へ入所させたりしてくれる人もいません。介護が必要なのに自宅で、ひとりきりで暮らさねばならないのは御本人にとっても大きな不利益となります。

3.おひとりさまがやっておくべき生前の相続対策

おひとりさまの場合、同居者がいるケース以上に生前の相続対策を行っておく必要性が高いといえます。
以下のような方法で対策を行いましょう。

3-1.相続人の状況を確認する

まずは自分に相続人がいるのかいないのか、把握する必要があります。
相続人がいるかいないかで、死後の相続方法が大きく変わってくるためです。
いる場合には、誰が相続人になるのか理解しておきましょう。

民法上、法定相続人になる人は以下の通りです。

配偶者は常に相続人

配偶者がいたら常に相続人になります。昔の配偶者と長年別居していて没交渉でも、籍が入っていたら相手に相続されてしまいます。関わりのない配偶者がいる方は注意が必要です。

第1順位は子どもや孫などの直系卑属

配偶者以外の相続人について、第1順位で優先されるのは子どもや孫、ひ孫などの直系卑属です。これらの親族がいたら、交流がなくても相続人になります。

第2順位は親や祖父母などの直系尊属

子どもや孫などの直系卑属がいない場合には、父母や祖父母などの直系尊属が相続人になります。親と不仲で絶縁していても相続権はあります。

第3順位は兄弟姉妹と甥姪

子どもや孫などの直系卑属も親などの直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が第3順位の相続人になります。兄弟姉妹が先に死亡している場合、その子どもである甥姪が相続します。
甥姪の子どもは相続人になりません。なお父母が異なる半血の兄弟姉妹(異母兄弟、異父兄弟)も相続人になりうるので、無視しないようにしましょう。

実際、おひとりさま相続の場合、生前にほとんど関わりのなかった人が相続人になるケースもよくあります。

3-2.遺産目録を作成する

次に、現在把握している財産内容をまとめて遺産目録を作成しましょう。
財産状況を遺しておかないと、死後に相続手続きを行う人がどこから手を付けて良いのかわからず混乱してしまうためです。
不動産や現預金、株式や投資信託などの資産を個別に書き出しましょう。
借金などの負債がある場合にはそういったものも記載すべきです。

どのような遺産があるのかだけではなく、どこに保管しているのかも書いておくと良いでしょう。

3-3.誰に遺産を承継させたいか決める

おひとりさまの場合、法定相続人以外の人へ遺産相続させたい方も多数います。そのためには遺言書を作成しなければなりません。
遺言書を作成する前提として「誰にどの財産を承継させたいのか」検討しましょう。
たとえば法定相続人ではない甥姪、親族関係がないけれどもお世話になった人、仲良くしている人などへ財産を残せます。個人に限らず会社組織や団体への寄付もできます。

3-4.遺言書を作成する

財産内容を把握して誰にどの遺産を承継させたいか決めたら、その内容を遺言書にまとめましょう。
遺言書を作成しておけば、遺言書のとおりに遺産を承継させることができます。法定相続人のいる方でも法定相続人以外の人へ財産を遺せます。
遺言書を作成しないと法定相続人が法定相続分に従って遺産相続するしかなくなるので、希望する相続方法があれば必ず遺言書を作成しましょう。

公正証書遺言を利用する

おひとりさまが遺言書を作成するときには、必ず公正証書遺言を利用するようオススメします。
公正証書遺言とは、公証人が作成してくれて公証役場で保管される遺言書です。
公証人が作成するので要式不備で無効になる可能性がなく、公証役場で保管されるので破棄や隠匿などのリスクもありません。
死後の検認も不要なので、遺言内容を実現する人に負担をかけずに済みます。

おひとりさまが自筆証書遺言を作成しても誰も見つけてくれない可能性がありますし、無効になってしまっては意味がありません。
せっかく遺言書を作成するなら、より確実に内容を実現できる公正証書遺言を利用すべきです。

3-5.遺言執行者を指定する

遺言書を作成する際には、遺言執行者を指定しましょう。
遺言執行者とは、遺言書に書かれた内容を実現する人です。
おひとりさま相続の場合、親族と疎遠だったり天涯孤独だったりするため、遺言書があっても誰もその内容を実現しない可能性があります。そうなったら、せっかく遺言書を作成しても意味がありません。

遺言執行者を指定しておくと、遺言執行者が受遺者への財産分与など必要な作業を行ってくれるので、より確実に遺言内容を実現できます。
おひとりさまの場合、頼れる親族もあまりいないと考えられます。周囲に遺言執行者として適切な人が見当たらない場合、受遺者が遺言執行者として弁護士や司法書士などの専門家を指定しておくと安心です。

4.任意後見契約を締結する

高齢になると、自分で適切に財産管理するのが難しくなる方が多数います。
介護が必要になったら要介護認定を受けて介護サービスを利用すべきですが、おひとりさまの場合、周囲に介護してくれる人もいません。
認知症になると不安が大きいでしょう。

そこで、元気なうちに任意後見制度を利用するようおすすめします。

任意後見制度とは

任意後見制度とは、将来判断能力が衰えた場合に備えて、あらかじめ後見人に財産管理方法や介護方法を依頼しておく制度です。財産管理や介護の受託をする人を「任意後見人」と言います。財産管理方法や介護方法、任意後見人は後見制度の利用者(本人)が自由に設定できます。
ただし任意後見制度を利用するには、元気なうちに任意後見人と任意後見契約を締結しなければなりません。判断能力が低下してしまってからでは契約できなくなるので、将来に備えて早めに任意後見人を選任し、任意後見契約を締結しましょう。

5.財産管理契約を利用する

任意後見契約を締結しても、実際に後見事務が開始されるのは判断能力が相当程度失われた後です。しかしおひとりさまの場合、その前の段階で第三者による見守りや財産管理が必要となるケースもよくあります。
心配な場合には「財産管理契約」を利用しましょう。財産管理契約であれば、判断能力が低下する前でも財産管理人に財産管理を任せられます。定期的に管理人と連絡をとり、生活状況や健康状態を把握してもらえるサービスを提供している専門家もいるので、必要に応じて利用しましょう。

6.死後事務委任契約を利用する

任意後見人や財産管理人の仕事は本人の死亡とともに終了するので、葬儀や保険年金関係の届出などの諸手続きは別途誰かに依頼しなければなりません。
こうした死後の諸手続きを「死後事務」といいます。
死後事務を委任する適切な人がいない場合、専門家と死後事務委任契約締結しましょう。
死後事務委任契約を結んでおけば、相続が発生したときに専門家が死亡後の諸手続きを行ってくれるので、周囲に迷惑をかけることはありません。

7.おひとりさまの相続は専門家に相談を

おひとりさまの相続では、ご家族のいる方以上に検討しなければならない事項がたくさんあります。遺言書の内容も決めなければなりませんし、任意後見契約や財産管理契約などの締結も検討しなければなりません。おひとりでは荷が重いと感じる方も多いでしょう。

困ったときには弁護士や行政書士などの専門家へ相談するようおすすめします。専門家には遺言書作成のサポートもしてもらえますし、遺言執行者への就任や任意後見人、財産管理人への就任も依頼できます。生前に快適に生活を送り死後にはスムーズに相続手続きを進められるよう、まずは一度、相続関係に積極的に取り組んでいる専門家に問い合わせをしてみましょう。

この記事を書いた人:元弁護士 福谷陽子

京都大学法学部 在学中に司法試験に合格
勤務弁護士を経て独立、法律事務所を経営する
約10年の弁護士キャリアの後にライターに転身
現在は法律ジャンルを中心に、さまざまなメディアやサイトで積極的に執筆業を行っている

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