司法書士に相続登記を依頼、全国どこでも対応してもらえる?~「オンライン申請による相続登記」とは~
不動産を相続した場合でも、司法書士に相続登記を依頼すれば自分たちで面倒な手続きを行う必要はありません。手間を省けて大きなメリットがあるでしょう。
ただ投資用マンションや別荘などの物件が遠方にある場合、現地から離れた自宅近くの司法書士に相続登記をお願いできるのでしょうか?
実は最近法務局でも「オンライン登記」の制度が導入され、全国対応してくれる司法書士事務所が増加しています。
今回は司法書士に相続登記を依頼するための「オンライン申請」について解説します。
遠方の不動産の名義変更を司法書士に依頼したい方はぜひ、参考にしてみてください。
目次
1.相続登記には法務局の「管轄」がある
不動産を相続したら、相続登記をしなければなりません。
相続登記とは、いわゆる「名義変更」です。名義変更をしないといつまでも不動産が被相続人名義のままになってしまうので、誰が真の所有者かわかりません。
そのままでは勝手に無権利者へ譲渡されたり、再度の相続が起こって混乱が発生したりするリスクが高まります。
確かに相続登記には期限がありませんが、トラブルを避けるためには、早めに相続人へと相続登記をすべきといえるでしょう。
相続登記の際には、法務局へ登記申請をしなければなりません。このとき「法務局の管轄」があるので要注意です。管轄をわかりやすくいうと、全国の法務局の取扱い地域。それぞれの法務局には管轄があるので、管轄外の不動産について相続登記を申請しても受け付けてもらえません。
相続登記の管轄は、その不動産が存在する場所の法務局となります。登記申請の際には、その不動産がある場所を管轄する法務局を調べて、そちらへ登記申請書や添付書類を提出しなければなりません。
全国の法務局の管轄一覧はこちらにまとまっていますので、参考までにご覧ください。
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html
不動産登記管轄の例
たとえば東京都千代田区や中央区、文京区、三宅村や大島町などの場合、管轄の法務局は東京法務局です。
板橋区の場合には板橋出張所、江戸川区なら江戸川出張所、北区や荒川区の場合には北出張所が管轄となります。このように同じ東京の23区であっても管轄が異なるケースがあります。
管轄を間違えると相続登記を受け付けてもらえないので、事前にきちんと調べましょう。
2.遠方の不動産を相続する場合の対処方法
遺産相続が発生すると、自宅だけではなくさまざまな不動産を相続する可能性があります。
自宅だけなら自分で相続登記を行ってもよいかもしれませんが、数が増えると手間がかさむでしょう。まして相続人が投資用物件や別荘を所有していた場合など、不動産が遠方の場合には遠くの法務局へ登記申請しなければなりません。現地に行って申請書を提出すると大変な労力と余分な費用がかかってしまいます。
2-1.司法書士に相続手続きを依頼する
名義変更に手間と費用がかかりすぎる場合、司法書士に依頼するようお勧めします。
司法書士に依頼すれば、本人が対応する必要はありません。自分で法務局に行かなくてもすべての物件について相続登記を完了してもらえます。
2-2.司法書士は全国対応できるのか?費用は?
ただしこのとき物件が遠くにあると「司法書士は全国対応しているのか?」という点が問題になります。
たとえば自宅近くの司法書士事務所に対し、遠方の投資用物件の相続登記も依頼できるのでしょうか?
この点については、多くの司法書士事務所が全国対応しているので心配要りません。
今は不動産登記の「オンライン申請」が可能となっているからです。
「不動産が遠方の場合には別途費用がかかるのではないか?」と心配される方もおられるでしょうけれど、追加料金もかからない事務所が大多数です。オンラインで登記申請するだけなので、司法書士にとってもたいした手間にはなりません。
このように多くの司法書士事務所が相続登記において全国対応していますし、料金体系も自宅近くの物件と変わらないのが一般的です。相続登記で困ったときには、物件の場所にかかわらず気軽に司法書士に相談してみてください。
3.オンライン申請の相続登記とは
オンライン申請による相続登記とは、ネットを通じて法務局へ登記申請する方法です。
登記申請書はネットで送信し添付書類は郵送で送ることもできるので、実際に管轄の法務局へ行かなくても手続きが完了します。
オンライン申請であれば全国どこでも対応できるので、遠方の物件であっても問題はありません。
3-1.法改正前は法務局へ行く必要があった
実は平成17年に不動産登記法が改正されるまでは、登記申請をする際に管轄法務局の窓口へ申請書類を提出しなければなりませんでした。また、登記申請が済むと「権利証(登記識別情報通知)」が発行されますが、その書類も法務局へ取りに行く必要がありました。
つまり従前は、「最低2回」法務局へ行かねばならなかったのです。手違いや訂正事項があると、さらに法務局へ行く回数が増えるケースもありました。
当時の司法書士は遠方の物件についての相続登記を受任すると、不動産の存在する地元の司法書士に「復代理」を依頼して対応していました。復代理とは、代理人がさらに代理人を選任すること。つまり本人から依頼を受けた司法書士がまた別の司法書士に依頼することで、遠方の物件に対応するしかなかったのです。
そうなると、復代理人となった司法書士にも報酬を払わねばならないので、結果的に依頼者にかかる費用がかさんでしまっていました。
3-2.法改正によってオンライン申請が可能になり、追加費用も発生しない
今のようにインターネットが発達した時代では、このようにいちいち現地に行かねばならないとするのは不合理でしょう。そこで法律が改正され、オンラインによる申請が認められるようになりました。
現在ではオンラインによる相続登記の申請を受け付けてもらえますし、添付書類も郵送で送れます。登記が完了したときに発行される権利証や登記識別情報通知書も法務局から郵送してもらえるので、一回も法務局に行く必要がありません。
司法書士としても、復代理の司法書士を選任する必要がなくオンラインと郵便で完結できるので、追加の費用を請求する必要がないのです。
今の時代、全国どこの不動産であっても近くの司法書士へ相続登記を依頼できると考えてよいでしょう。
4.相続登記を司法書士に依頼する流れ
遠方の不動産を含め、相続登記を司法書士に依頼したい場合には以下のような流れで進めましょう。
4-1.司法書士に相談、依頼する
まずは依頼したい司法書士を探し、相続登記の相談をして依頼する必要があります。
料金や必要書類についてもしっかり説明を受けましょう。
4-2.委任状を作成する
司法書士に相続登記を依頼するときには、委任状を作成して司法書士に渡さねばなりません。その他、遺産分割協議書や遺言書などの書類も必要となる可能性があります。
4-3.司法書士がオンラインで登記申請
必要書類と委任状を渡したら、司法書士がオンラインで法務局へ相続登記の申請をしてくれます。依頼者は何もする必要がありません。
4-4.登記識別情報通知を送ってもらう
相続登記が完了したら、法務局から司法書士へ登記識別情報通知が送られてきます。
司法書士がこの書類を受け取ると、依頼者へ郵便などの方法で交付してくれます。
登記識別情報通知に記載された番号は不動産の所有者であることの証明となる重要なものなので、厳重に管理しましょう。
以上で相続登記の手続きは完了します。
5.相続登記を依頼する司法書士の選び方、探し方
相続登記を依頼する司法書士を探したい場合には、主に「インターネットを使って探す方法」と「知り合いや不動産会社、金融機関などから紹介を受ける方法」があります。
もしも特別な伝手がないなら、ネットを使って探す方法がお勧めです。
ホームページを出しているような司法書士であれば、ほぼ確実にオンライン申請に対応しているでしょう。遠方の物件であっても追加費用なしに依頼できるケースが多数です。
またいくつかの司法書士事務所を比べれば、料金面などで有利な条件の専門家を探しやすくなるでしょう。
遠方の物件の相続登記であっても司法書士にかかる労力は変わらないので、遠慮する必要はありません。まずはお近くの司法書士事務所や相続案件に力を入れている司法書士事務所を探して連絡を入れてみてください。