【銀行に相続の相談をするメリット・デメリット】有資格の相続専門家に相談する場合との比較
相続の相談は信託銀行などの金融機関でも受け付けています。
ただしどのような相談でも銀行で受け付けてもらえるわけではありません。
銀行へ相談する場合にはメリットだけではなくデメリットもあるので、正しい知識をもって対応しましょう。
この記事では銀行に相続の相談をするメリットとデメリット、司法書士など有資格の相続専門家に相談する場合との比較をご紹介します。
これから第三者へ相続の相談をしようとしている方はぜひ参考にしてみてください。
目次
1.相続の相談ができる専門家
相続の相談ができる専門家や専門機関には、以下のようなものがあります。
1-1.弁護士
弁護士は法律全般について相談できる専門家です。
以下のようなことを相談・依頼できます。
- 相続人調査
- 相続財産調査
- 相続放棄や限定承認
- 遺産分割協議や調停、審判の代理
- 遺言書作成
- 遺言執行者への就任
- 遺留分侵害額請求の請求
- 預金を使い込まれた場合の取り戻し請求
- 預貯金の払い戻し、株式の名義変更など
1-2.司法書士
司法書士は不動産登記(名義変更)を得意とする専門家です。
以下のようなことを相談・依頼できます。
- 相続人調査
- 相続財産調査
- 相続放棄や限定承認
- 不動産の名義変更
- 遺言書作成
- 遺言執行者への就任
- 預貯金の払い戻し、株式の名義変更など
1-3.行政書士
行政書士は文書作成の際に代書を頼める専門家です。
相続の場面では以下のようなことを相談・依頼できます。
- 相続人調査
- 相続財産調査
- 遺産分割協議書の作成
- 許認可の引き継ぎ
- 車の名義変更
- 遺言書作成
- 遺言執行者への就任
- 預貯金の払い戻し、株式の名義変更など
1-4.税理士
税理士は税務についての専門家です。
相続の場面では以下のようなことを相談・依頼できます。
- 節税対策
- 生前贈与
- 遺言書作成
- 遺言執行者への就任
- 相続税の申告
- 税務調査への立会い
- 預貯金の払い戻し、株式の名義変更など
相続を取り扱う専門家については費用を含めてこちらの記事で詳細に解説しています。
よければご参照ください。
2.銀行が相続相談でできること
相続において銀行が対応してくれるのはどういった部分なのでしょうか?
以下で銀行が相続相談で対応できる範囲や仕組みについて、解説します。
2-1.銀行の相続相談で対応してもらえること
銀行で対応してもらえるのは、主に以下のような業務です。
- 相続人調査
- 相続財産調査
- 遺産分割協議を進める際のアドバイス
- 預貯金、有価証券などの換金、名義変更
- 不動産の名義変更についてのアドバイス
- 所得税・相続税など税務関係についてのアドバイス
- 資産運用
ただし銀行自体が直接対応するわけではありません。銀行は司法書士や税理士などと提携しており、顧客が相続に関して相談すると、そういった専門家へ案件を回します。
すると紹介された相続の専門家が個別に対応する、という仕組みです。
つまり相続の相談を持ちかけられたとき、銀行は自身が対応するのではなく、提携している各種の専門家を紹介する(業務を投げる)だけです。銀行は顧客から手数料を払ってもらい、収益をあげるビジネスモデルになっています。
2-2.銀行の相続相談で対応できないこと
相続業務の中でも、以下のような事項には銀行は対応できません。
- 不動産の登記業務(名義変更)
- 相続税や所得税の申告
- 遺産分割調停や審判、その他裁判手続
上記のような業務を依頼したい場合には、銀行ではなく個別の専門家に依頼する必要があります。
3.銀行に相続の相談をするメリット
銀行に相続を相談すると、個別に有資格者へ相談するのと比べてどういったメリットがあるのでしょうか?
以下で比較してみていきましょう。
3-1.身近で信頼できる
銀行は身近にありますし、信頼できると感じる方が多いでしょう。
一方、専門家は身近にいないケースが多く、信頼できる人を探すのは簡単ではありません。
身近で普段から取引していて信頼できる金融機関に気軽に相談できることは銀行の強みといえます。
3-2.個別に専門家を探さなくていい
相続手続きを行う際には、さまざまな専門家が関わります。
たとえば遺産分割協議書の作成は行政書士に依頼しても、不動産の登記は司法書士に依頼しなければなりませんし、相続税の申告は税理士に依頼しなければならないでしょう。
自分で対応しようとすると、個別にこういった専門家を探して依頼する必要があります。そうなると非常に煩雑になってしまいます。
銀行に相談すると、提携している専門家に依頼してもらえるので自分で個別に専門家を探す必要がありません。手間を省けるのも銀行に相談するメリットといえるでしょう。
3-3.資産運用を相談できる
資産運用は銀行の本業の1つです。
特に高額な資産を預けている場合、資産運用方法についての提案も受けられます。
たとえば不動産を相続した場合の活用方法、保険を活用した節税方法なども提示してもらえるでしょう。
状況に適した資産運用方法を相談できるのも、銀行のメリットの1つといえます。
3-4.信託を利用しやすい
銀行を利用すると、信託というスキームを使えます。
信託とは、資産を受託者へ預けて委託者の希望通りに管理運用してもらう契約です。
たとえば自分では判断能力が低く財産管理するのが難しい子どもや障害者などのために、銀行に財産を管理してもらえます。
信託は生前から活用でき、生前の財産管理方法から死後の財産引き継ぎ方法まで幅広い対応ができます。
信託について相談できるのも、銀行の強みといえるでしょう。
ただし司法書士などの専門家も信託の支援を行っているケースがよくあるので、信託は銀行にしか相談できないという意味ではありません。
3-5.相続が起こったらすぐに現金を受け取れる(信託を利用する場合)
一般的に、相続が発生すると被相続人名義の預金が凍結されて、預金の出金ができなくなってしまいます。
仮払い制度によって一定額までは引き出せますが、全額引き出すには遺産分割協議の成立を待たねばなりません。
銀行で信託を利用した場合、預金を信託しておけば相続人がすぐに預金を受け取って出金できます。葬儀費用や医療費の清算、生活費などにお金が必要な際にはメリットが大きいといえるでしょう。
(ただし専門家に信託の支援を依頼した場合にも効果は同じです。)
4.銀行に相続を相談するデメリット
銀行に相談すると、有資格者へ直接相談するのと比べてデメリットもあります。
以下でどういったデメリットがあるのか、みていきましょう。
4-1.高額な手数料がかかる
銀行に相談すると、高額な手数料がかかります。
銀行自身が相続のアドバイスを行うわけではなく提携している専門家に案件を投げているにもかかわらず、専門家のコーディネイト費用がかかってしまうのです。
銀行へ依頼した場合の料金は、最低100万円程度はかかると考えましょう。
直接有資格者に相談すると、費用は20~30万円程度に抑えられるケースも多々あります。
それと比べると銀行のサービスは割高といえるでしょう。
4-2.書類収集の手間がかかるケースがある
銀行に相続人調査などの手続きを依頼した場合、戸籍謄本などの必要書類は相続人自身が行わねばならないケースがよくあります。
弁護士や司法書士などの専門家であれば専門家としての権限で書類を集められますが、銀行自身にはそういった権限がないからです。
戸籍謄本類の収集には大変な手間がかかりますし、間違いも生じやすい問題があります。
実際、専門家に依頼する大きなメリットの1つが面倒な書類収集の手間を省けることにあります。
自分で書類を集めなければならないなら、わざわざ専門家に依頼する必要性は大きく低下します。
書類作成の手間がかかる可能性があることは、銀行へ依頼する大きなデメリットといえるでしょう。銀行の相続サービスを利用する前に、どのようにして書類を集めるのかはしっかり確認すべきです。
5.専門家と銀行の比較一覧表
銀行 | 専門家(有資格者) | |
---|---|---|
対応できる業務範囲 | 資産運用を相談できるのが特徴的 法律や税務に関する取り扱い範囲は広くはない | 専門家の種類によって依頼できる内容が異なる |
ワンストップ対応 | すべての専門家を紹介してもらえるのでワンストップで相続手続きを完結しやすい | 個別に専門家を探すひつようがある(ただし専門家同士で提携してる場合、個別に探す必要はない) |
費用 | 高額 | 比較的リーズナブル(事務所にもよる) |
6.銀行に相続の相談をすべきケース
以下のような場合には、銀行に相続を相談してみる価値があります。
- 高額な資産がある(相続税が確実に発生しそうな場合など)
- 信託銀行を普段から利用している
- 高額な費用を払っても専門家を探す手間を省きたい
7.銀行を利用すべきではないケース
以下のような場合には銀行ではなく専門家に相談するようおすすめします。
- できればリーズナブルに相続手続きを終えたい
- 資産額は多くはない
- 専門家を探すのは苦にならない
8,相互に提携関係のある専門家へ相談するのがベスト
銀行へ相談するとワンストップで相続手続きを完結しやすい反面、高額な費用がかかってしまいます。かといって個別に専門家を探すのは面倒、という方も多いでしょう。
実は銀行のデメリットも専門家のデメリットも克服できる方法があります。
それは、相互に提携している専門家へ依頼する方法です。
たとえば司法書士や税理士とも連携している弁護士に依頼すれば、登記も税務もすべてまとめて任せられます。自分で司法書士や税理士を探す必要はありません。
ある専門家から提携している別の専門家を紹介してもらえますが、そのために別途手数料が発生することもありません。また費用が銀行ほどかからないので、資産額が小さい方でも安心して依頼できます。
リーズナブルかつ手間をかけずに相続手続きを終えられる方法として、非常にメリットが大きいといえるでしょう。
まとめ
銀行の相続相談にはメリットもデメリットもあります。
まずはその特徴をよく理解してから依頼を検討しましょう。
リーズナブルに費用を抑えたいなら相互に提携関係のある専門家に依頼するのが得策です。
相続に力を入れている専門家は提携してワンストップサービスを提供しているケースが多いので、まずは一度、そういった専門家を探してコンタクトをとってみてください。