事業承継、ソコが聞きたい! 第14回 事業承継時の相続税対策(4)「生命保険の活用」
生命保険は相続税対策の手段としてさまざまな形で活用されてきています。 今回は相続税対策としての生命保険に使い方について紹介しましょう。 |
目次
相続税対策としての生命保険
納税資金対策としての生命保険
生命保険には個人が契約する場合と、法人が契約する場合があります。
法人契約の場合、経営者が死亡した場合は死亡保険金を前述の「死亡退職金」に記載したとおり、相続人である遺族への死亡退職金や弔慰金支給という方法で相続税の納税資金対策として活用できます。
生前退職の場合は、後述の事例のように生命保険を解約して、その解約返戻金を退職金に活用できます。
相続税対策としての生命保険
保険料を損金算入できるものであれば、保険料の支払いにより現金や預金の資産が減少し、かつ利益が減ることで、純資産価額や類似業種比準価額(年利益金額、純資産価額)に影響を与え、ある程度株価を引き下げることができます。
また、後述の事例のように一定期間経過後に解約することで節税効果が期待できます。
相続税対策としての生命保険の活用(1)「定期保険」
事業承継を計画している事業会社が被保険者を役員とし、死亡保険金を自社が受取る生命保険契約を締結した場合、その支払った保険料は期間の経過に応じて全額損金算入ができます。
相続税対策としての生命保険の活用(2)「長期平準定期保険および逓増定期保険」
事業会社が役員を被保険者として契約した定期保険の中でも、特に保険期間が長期にわたる定期保険や保険金額が逓増する定期保険は、保険期間の前半で支払う保険料の中に相当多額の前払保険料が含まれています。
そのため、その支払保険料の損金算入時期に関する取扱いが、前述した定期保険とは別に下記のように定められています。
(参考)長期平準定期保険等に係る保険料の損金算入時期(法人が支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱いについて(平成20年2月28日課法2-3、課審5-18))
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長期平準定期保険
定期保険の中で特に保険期間が下記の区分に該当する長期間のものです。
区分 | 前払期間 | 資産計上額 |
---|---|---|
保険期間満了の時における被保険者の年齢が70歳を超え、かつ、当該保険に加入した時における被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が105を超えるもの | 保険期間の開始の時から当該保険期間の60%に相当する期間 | 支払保険料の2分の1に相当する金額 |
逓増定期保険
契約時の保険金額が保険期間満了時まで一定金額まで増加する定期保険です。
満期返戻金がない掛け捨ての定期保険ですが、中途解約した場合は、支払った保険料が解約返戻金として戻ってきます。
区分 | 前払期間 | 資産計上額 |
---|---|---|
(1)保険期間満了時における被保険者の年齢が45歳を超えるもの((2)または(3)に該当するものを除く) | 保険期間の開始の時から当該保険期間の60%に相当する期間 | 支払保険料の2分の1に相当する金額 |
(2)保険期間満了の時における被保険者の年齢が70歳を超え、かつ、当該保険に加入した時における被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が95を超えるもの((3)に該当するものを除く) | 同上 | 支払保険料の3分の2に相当する金額 |
(3)保険期間満了の時における被保険者の年齢が80歳を超え、かつ、当該保険に加入した時における被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が120を超えるもの | 同上 | 支払保険料の4分の3に相当する金額 |
【事例】長期平準定期保険を利用した節税効果および退職金の確保
◎条件
◎契約後20年目で経営者の退職時に解約した場合
以上から、保険期間の開始時から保険期間の60%に相当する期間(30年×60%)18年までは、支払保険料100万円の2分の1に相当する金額である50万円を毎年損金処理し、残額50万円を前払保険料に計上します。⇨損金累計額900万円 19年以降は、年払い保険料100万円および18年分の前払保険料累計額900万円を残りの期間12年で按分した75万円の合計175万円を損金処理します⇨損金累計額350万円 ◎まとめ
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相続税対策としての生命保険の活用(3)「養老保険」
次は、事業承継を計画している事業会社が被保険者を役員とし、死亡保険金および生存保険金を自社が受取る養老保険契約を締結した場合です。
支払保険料は保険事故の発生または保険契約の解除もしくは失効により保険契約が終了するまでは全額資産計上することになります。
この間は損金算入ができないため株価を引下げることはできないので、株式を後継者へ承継する場合の相続税対策としては効果がありません。
ただし、役員および従業員全員を被保険者として、死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で生存保険金の受取人が事業会社である場合、支払保険料の2分の1に相当する金額は資産に計上します。
しかし、残りの2分の1に相当する金額は期間の経過に応じて損金に算入できるので、後述の事例のように節税効果と退職金の原資の確保に活用できます。
ただし、あらかじめ福利厚生規定を整備しておくことが必要です。
【事例】養老保険を利用した節税効果および退職金の確保
◎条件
◎満期10年を迎えた場合
◎まとめ |
プロフィール
一般社団法人 多摩経営工房(多摩ラボ)
中小企業診断士、社会保険労務士、税理士、ITコーディネータ等の資格を持つプロのコンサルタント集団で構成されている。
さまざまな分野や業種での実務経験が豊富な専門家が、日本経済を支える中小企業の役に立ちたいという強い意思と情熱を持ち、また日本の中小企業が持つ優れた技術やサービスを広く海外に展開し、国際社会にも寄与すべく以下の活動を行っている。
- 多摩地域の企業の経営課題解決のため、地元密着でサポート
- 企業と行政・金融機関などを繋ぐパイプ役として、また専門的知識を活用した中小企業施策の活用支援など、幅広い活動を通して企業発展を支援
多摩経営工房(多摩ラボ)ホームページ
http://tama-labo.jp/
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