事業承継、ソコが聞きたい! 第2回 親族内承継のメリット・デメリット
事業承継は一般的に「親族内承継」「役員・就業員への社内承継」「社外への引継ぎ(M&A等)」の3つに区分されます。 今回はこのうちの「親族内承継」を取上げ、メリットやデメリットを中心に解説します。 |
目次
親族内承継のメリット・デメリット
家族や親戚などの事業を承継する親族内承継には、次のメリットやデメリットがあります。
親族内承継のメリット
- メリット1.「従業員や取引先などから心情的理解を得やすい」
- メリット2.「創業者と親族承継した現経営者が満足感を得やすい」
- メリット3.「所有と経営の分離を回避できる」
- メリット4.「事業承継を長期に渡り柔軟に実施できる」
親族内承継のデメリット
- デメリット1.「後継者に経営者の資質が備わっているとは限らない」
- デメリット2.「複数の後継者候補がいる場合、親族内での対立を招きやすい」
- デメリット3.「親子間で感情的な問題が発生しやすい」
それぞれのメリットやデメリットについて詳しくご紹介しましょう。
親族内承継のメリット
親族内承継のメリット1.「従業員や取引先などから心情的理解を得やすい」
従業員や取引先など内外の関係者にとって経営者の交替は重要な関心事ですが、現経営者の子女が跡を継ぐのは自然なことですし、これまでと変わらない待遇や付き合いへの継続の期待もあって、心情的に受け入れられやすく、同意を得やすい傾向にあります。
親族内承継のメリット2.「創業者と親族承継した現経営者が満足感を得やすい」
一般的に創業者は、自身が築き上げてきた企業に対して特別の愛着を持っていて、自分と血のつながりのある人間に承継したいという感情を持っています。
自分の子女や親族に事業を承継させることで、この感情を実現でき、満足感を得ることができます。
また、先代から引継いだ経営者も親族に引継ぐことで、使命を果たした満足感や安堵感を得ることもできます。
親族内承継のメリット3.「所有と経営の分離を回避できる」
事業承継は「社長の座」という経営面の承継と、「自社株式」という資本面の承継があります。
後継者が経営者の子女であれば、経営面の承継を行うと同時に、財産相続を行うことにより、中小企業の強みでもある「所有と経営の一本化」の状態を維持することができます。
親族内承継のメリット4.「事業承継を長期に渡り柔軟に実施できる」
親族内で事業承継する場合、後継者を子供のころから育成に取組め、事業承継をする時期や期間も現経営者が企業の現状等によって柔軟に判断することができます。
事業承継を円滑に行うため、後継者を早期に決定し、長期の準備期間を確保することも大切です。
親族内承継のデメリット
親族内承継のデメリット1.「後継者に経営者の資質が備わっているとは限らない」
特に親族内承継では、後継者に必ずしも経営能力があるとは限りません。
経営能力が無いままに事業承継し、仮に事業継承後に業績が悪化した場合、後継者本人に「自分は後継者の器ではない」とか「そもそも後継者になどなりたくなかった」といったマイナスの意識が芽生えてくるようになります。
また、社内・社外といった周囲からも「経営能力がないのに、子女というだけで社長になれた」と思われるようになり、社内のモチベーションも低下し、有能な社員の退社にもつながりかねません。
親族内承継のデメリット2.「複数の後継者候補がいる場合、親族内での対立を招きやすい」
たとえば、子女全員に役員としてのポストを与え、自社株式も平等に与えたようなケースでは、経営者の死後、経営権を巡って、親族同士で紛争が起こりがちです。
そのような最悪のシナリオを避けるために、誰を後継者とするかを明確に決め、後継者としない親族に対しては財産分与面で手厚く保護するなどの方針を親族会議で決めて、同意を得ておく必要があります。
親族内承継のデメリット3.「親子間で感情的な問題が発生しやすい」
親族内承継は子供のころから計画的に育成できるなどメリットは大きいですが、その反面、親子であるがゆえに甘えや妥協、感情面の衝突などいわゆる親子喧嘩のような状況に陥りがちで、事業承継がかえって上手くいかないケースも散見されます。
親族内承継では、後継者の資質の見きわめと育成が課題
このように親族内承継は現経営者にとっては理想的ですが、デメリット面にも十分に留意してデメリットとなるリスクを回避して、親族内承継のメリットを十分に引出すような事業承継を進めたいものです。
そのためには、後継者としての資質の見きわめと経営者としての育成が非常に重要になります。そして後継者には経営権が集中できるように準備しておくことが大切です。
次回からは、親族内後継者の選定と育成などについて解説します。
プロフィール
一般社団法人 多摩経営工房(多摩ラボ)
中小企業診断士、社会保険労務士、税理士、ITコーディネータ等の資格を持つプロのコンサルタント集団で構成されている。
さまざまな分野や業種での実務経験が豊富な専門家が、日本経済を支える中小企業の役に立ちたいという強い意思と情熱を持ち、また日本の中小企業が持つ優れた技術やサービスを広く海外に展開し、国際社会にも寄与すべく以下の活動を行っている。
- 多摩地域の企業の経営課題解決のため、地元密着でサポート
- 企業と行政・金融機関などを繋ぐパイプ役として、また専門的知識を活用した中小企業施策の活用支援など、幅広い活動を通して企業発展を支援
多摩経営工房(多摩ラボ)ホームページ
http://tama-labo.jp/
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