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弁護士費用(報酬)の種類と考え方

  • 弁護士費用は高額なので、自社には顧問は要らない
  • 弁護士は高いから相談しにくい

このような考えの企業や個人の方がたくさんおられますが、弁護士に依頼することによって得られるメリットを考えると、弁護士費用は決して高額ではありません。
以下では一般的な弁護士費用(報酬)の種類や相場について、ご説明します。

1.弁護士費用の種類一覧

まずは弁護士費用としてどのような項目があるのか、一覧でご紹介します。

法律相談料

弁護士に何らかの法律問題を相談したときにかかる費用です。

着手金

弁護士に示談交渉や調停、訴訟などの事件対応を依頼したとき、当初に発生する費用です。

報酬金(成功報酬金)

事件が解決したときに発生する費用です。解決内容に応じて金額が変わります。

実費

弁護士が事件処理を進めるとき、実際にかかる交通費や印紙代などの費用です。

日当

弁護士の出張手当の費用です。

手数料

弁護士に単発で書類作成や手続きなどを依頼したときの費用です。

タイムチャージ方式について

時間単位で弁護士費用が発生する方式です。この場合、時給で弁護士費用が加算されていきます。

顧問料

弁護士と顧問契約をしたときに月額で発生する費用です。

以下ではそれぞれの弁護士費用の意味と相場を、より詳しく見ていきます。

2.法律相談料について

法律相談料は、相談した時間に比例して金額が加算されます。
個人が交通事故や離婚などの法律相談をするときの相場は30分5,000円程度です。ただし最近では、初回の相談料を無料にしたり、相談する分野によって相談料を無料にしたりする事務所も増えています。個人の場合には法テラスなどでも無料相談を受けられるので、相談料を払う場面は減ってきていると言えるでしょう。

一方事業者が特殊分野を相談する場合には相談料が高額になり、1時間で3~5万円程度かかるケースもあります。ただし事業者の場合でも、「顧問契約」をすると毎回の法律相談料が不要となるのが一般的です。

3.着手金について

着手金は原則的に事件を依頼したときに一括払いしますが、分割払いを受け付けてもらえるケースも増えています。
金額は依頼する事件内容に応じて大きく変わってきます。交渉案件であれば、着手金は10万円~15万円程度が多いですが、調停・訴訟事件になると20万円、30万円以上と高額になります。刑事事件でも30万円程度かかるケースが多数です。

一方事件の種類によっては着手金も無料に設定している事務所があります。たとえば任意整理や交通事故の示談交渉などは無料の弁護士を探すのも難しくありません。

4.報酬金について

報酬金額は解決内容によって大きく異なります。金銭を獲得できる事件であれば、通常獲得できた金額によって報酬金の金額が決まります。
事件の種類にもよりますが、相手から回収できた金額の15~20%程度になることが多く、10万円+10%などの計算方法になっている事務所もあります。
また離婚や親権争い、名誉に関する事件など金銭が関係しない事件では、目的を達したことによって報酬金が発生します。たとえば離婚が成立したときに30万円、親権がとれたときにプラス10万円などです。財産分与や慰謝料などがあれば回収金額に応じて報酬金が加算されます。

5.実費について

実費は交通費や裁判所に支払う印紙代、郵便切手代などの実際にかかる費用であり、依頼者が弁護士に依頼せず自分で手続きをしても必要です。厳密な意味での弁護士費用とは異なりますが、弁護士に依頼するときには実費も一緒に払うので、多くのケースで「弁護士費用」に入れて計算します。
金額は依頼する事件によって大きく異なります。示談交渉ならほとんど実費はかかりませんが、裁判を起こすと請求金額に応じた印紙代が発生します(たとえば500万円の請求で印紙代3万円程度)し、郵便切手も必要です。遠方の裁判所へ主張が必要なケースでは交通費や場合によっては宿泊費も必要になります。

6.日当について

弁護士の出張手当てである日当は、半日出張で1~3万円程度、1日出張で3~5万円程度が相場です。弁護士に出張を依頼すると、日当と交通費の両方を依頼者が負担することになります。

7.手数料について

弁護士に遺言書や契約書作成などの単発の書類作成や手続き申請などを依頼すると、手数料がかかります。金額は依頼した事務の内容に応じて異なり、複雑で手間がかかる場合には高額になります。

8.タイムチャージ方式と着手金報酬金方式の違い

弁護士費用を計算するとき、タイムチャージ方式と着手金報酬金方式の2種類があることを知っておきましょう。特に企業の顧問業務ではタイムチャージ方式が適用される事務所が多く存在します。
タイムチャージ方式とは、弁護士の1時間あたりの単価を取り決めて、事件処理にかかった時間分の報酬を請求する方式です。
たとえば契約締結交渉と契約書の作成を依頼した場合、事前調査や相手との交渉、契約書の作成、見直しと完成まで、一連の手続きにかかった時間と時給をすべて合算し、合計金額を請求されます。弁護士の1時間あたりの単価は3~5万円程度になることも多く、事件処理に時間が長くかかると弁護士報酬がかなり高額化します。

一方着手金報酬金方式は、当初に着手金を支払って事件が解決したときに報酬金を支払う方式です。事件処理にどれだけ時間がかかっても弁護士報酬は変わりません。ただ早期に簡単に解決できた場合には、タイムチャージ方式より割高になる可能性があります。

どちらが良いのかはケースバイケースですが、着手金報酬金方式の方が、クライアントにとって費用を予想しやすいでしょう。タイムチャージの場合、無制限に加算されると困るので、当初に上限を定めるなど工夫をしておいた方が安心です。

9.顧問料について

弁護士と顧問契約をすると、毎月顧問料が発生します。顧問料の相場は毎月3~5万円程度ですが、最近では顧問契約のコース設定を多様化する事務所が増えています。
たとえば毎月の法律相談の回数を限定して月額1万円のライトなコースを設定したり、事件依頼をしたときの割引き率を変えて3万円、5万円などのコースを作ったり、会社に訪問して手厚いサービスを行う代わりに7万円や10万円などのプレミアムなコース設定をしたりします。
自社の財務事情と法律家を要する程度を考慮して、必要な範囲で顧問契約を利用しましょう。

10.(旧)日本弁護士連合会報酬基準について

弁護士費用を理解する上で、かつての日本弁護士連合会報酬基準を知っておくことは重要です。
今は弁護士費用が自由化されていますが、かつては日本弁護士連合会が弁護士報酬をはっきり規定しており、どこの事務所に依頼しても一律の料金がかかっていました。
日弁連の報酬基準は、そのときの基準です。
今でも多くの事務所が、一部日弁連の報酬基準を導入して弁護士費用を計算しているので、知っておくと弁護士費用を理解しやすくなります。
日弁連の報酬基準が特によく使われるのは、訴訟などの着手金や報酬金の計算です。
依頼者の獲得した(すべき)経済的利益を基準に、以下のように計算されます。

着手金

300万円以下の場合8% 最低10万円
300万円を超え3000万円以下の場合5%+9万円
3000万円を超え3億円以下の場合3%+169万円
3億円を超える場合2%+369万円

報酬金

300万円以下の場合16%
300万円を超え3000万円以下の場合10%+18万円
3000万円を超え3億円以下の場合6%+138万円
3億円を超える場合4%+738万円

11.弁護士費用(見積書)確認のポイント

弁護士に事件の依頼をする際には「見積書」を発行してもらって検討をします。その際、以下のような点に着目しましょう。

11-1.着手金成功報酬金方式か、タイムチャージ方式か

まずは着手金性行報酬金方式か、タイムチャージ方式かを確認します。どちらになっているかにより、かかる費用の総額が大きく変わってくる可能性があるためです。長くかかりそうな事件なら着手金報酬金方式の方が得になりますし、かかる費用の予測をしやすいです。

11-2.どのくらいの金額になるかシミュレーション

見積書にはっきりした金額が書かれておらず、弁護士費用の計算方法のみ書かれている場合には、実際にどのくらいの弁護士報酬が発生するのか金額をシミュレーションしましょう。わからなければ弁護士に確認しましょう。

11-3.追加費用が発生する場合と金額について

事件が進行すると、当初の見積書に書いていなかった追加費用が発生する可能性があります。どういった場合にどのような費用がどのくらい発生するのか、弁護士に確認して理解しておくべきです。

11-4.その費用でどこまでがカバーされるか

今見積もりに書いてある弁護士費用により、どこまでカバーしてもらえるのか確認しましょう。1つの事件でも、資料の取り寄せ、調査、交渉、契約書の作成、調停、訴訟、ADRの対応などいろいろな作業が必要なケースもあります。全部やってもらえると思っていたら実は別料金だったとなると思わぬ出費になります。

以上が弁護士報酬の概要と考え方です。今後弁護士に相談するときの参考にしてみて下さい。

この記事を書いた人:元弁護士 福谷陽子

京都大学法学部 在学中に司法試験に合格
勤務弁護士を経て独立、法律事務所を経営する
約10年の弁護士キャリアの後にライターに転身
現在は法律ジャンルを中心に、さまざまなメディアやサイトで積極的に執筆業を行っている

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